−月下美人−
「遠き夜空を見上げ、微(かす)かに覗(のぞ)く弓張り(ゆみはり)の月が私(わたくし)の心を締めつける。
柔らかな光がまるで、この身が世を去る日を待ち望んでいるかのように残酷に感じてしまうのは、私の心に不安と焦りが色濃くなってしまっているからでしょうか…
幾度となく私を娶(めと)ろうとする殿方を追い返しながら思うのです。
なぜ放っておいてくださらぬのでしょう
私はただ…感情の豊かなこの世界にいたいだけだというのに…
...人間の欲とは斯様(かよう)に恐ろしいものであったのか…と
世を乱(みだ)してしまえば満月の夜(よ)、天女等(ら)は私を連れ去り、羽衣を纏(まと)わせ空蝉(うつせみ)とするでしょう。
私はまだ人形(ひとがた)にはなりとうございませぬ。
あぁ...月よ。どうか満ちないで…まだ…まだ逝きたくない、此処にいとうございます...
誰にも告げることはできず、抗(あらが)うこともかなわず、全てを忘れて逝くのでしょうか…
かぐやの名も…心も…思い出すらも
ふふ、十五夜が来るのを恐れる私はさぞ滑稽(こっけい)に見えましょう。
されど然様(さよう)な思いこそ私の心(まこと)なのでございますよ。」
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