風となりて



−風となりて−



「ここにきてどれくらいの時が流れたのだろう。窓から見える景色は表情を変え四季の変化を感じさせる。

先刻(せんこく)先生が面会に来てくれた。

ところどころ苦笑いしてるのがわかる。

私は悟ったんだ…この病は治らない…。

先生は嘘が下手だ…涙を堪えて無理矢理私を元気づけようとしている。だけどそれが私にはたまらなく面白かったんだ…ははは…ひねくれてるよな...



『大丈夫ですよ〜先生、すぐに戻りますから!

みんなと一緒に待っててくださいね!』



『全く!世話のかかる人だよ…どうだい、菊?うちの先生は…おっかしいだろ?考えてることまるわかりだよ…単純なんだからさっ!』



『ははは…ん?あれ?…なんだろ?目がかすむ…よく見えない…あれれ…おかしいな』



『あぁ…そうか…先生があんな顔しちゃったのも、無理矢理元気づけようとして頑張ってたのも…全部...私のせいか…ぐすっ…泣いていたのは…私の方だったのか

…先生は全て知った上で、何も言わなかったんだね…ははっ...なんかズルいや…うっ、うわぁぁぁぁあ(泣)』



体が崩れていくのはもう止められない

鍛えあげてきた剣も、身体も、病の前ではあまりにも無力だ。



『申し訳ありません先生…やっぱり私は戦場に戻る事はできないようです…』



私はいつ死ぬのか…武士として戦って散ることもできず、愛する者達の為に命を張ることも敵わず、ただただ朽ちてゆくのなら...せめて...せめて風となり、皆の側に吹いていたい…皆と共に戦場にいたい!!

私は!私は最後まで誠の旗と、先生の側にいたかったのに!!

うっ…ゴホゴホ…ちぇ…悔しいなぁ…もう!土方さん!先生の事…頼んだよ...


…お世話になりました」



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